この夏、きゅうりの夏涼み君と味一角君は予想以上の美味しいキュウリを絶え間なく与えてくれた後、秋風とともに去っていきました。
確かに、きゅうりはうまかった、しかし…。
夏涼み君も味一角君も生き物。
ちょっと朝の水遣りを怠ると、しょんぼりして、私の自省を促すのです。
つらかった…、はっきり言って、つらかった。
日の出とともに水遣りを始めていたあの夏の日…、目を覚ましたばかりで、おなかがペコペコなの、とでも言い出しそうな蚊が私の足とか腕に何匹も群がり気が狂いそうになった、あの夏の日…。
「今日は昼から雨が降るみたいだから…」何度、こう考えたことでしょう。
しかし、生き物を飼育する者の責任です、義務です。
来る日も来る日も蚊に刺されながら、「もう家庭菜園なんか2度としないぞ」そう心に誓いながら水遣りを続けた、あの夏の日…。
夏の終わりとともに日の出も遅くなり、出勤前の短い時間の間での水遣り。
夏涼み君と味一角君が去って行ったあの日、あの日の寂しさ、そして責務からの開放感、朝の自由時間。
そんなある日、職場の上司が
「きゅうりってどうなった?連作障害があるから何か他の物を植えた方が良いんだよ。いちごなんてどう?苗を持って来ようか?小さい子だったらいちごなんて喜ぶぞ。赤くなるし。」
びびりました。
しかし、その感情を面に出さないようにして、「良いっすね。是非、お願いします。」
そーゆー人なんです、私。
そして、ある朝、通勤電車を降りて、駅から職場までの15分間の通勤路をてくてく歩いていくと、その上司が重そうな袋を提げて自転車を漕いで行くのが見えました。
大きな体でサイクリング車に乗って、えっちらおっちら片手運転で、いつもより危なっかしく見えました。
「ありがたい」とも「私は幸せ者だ」とも感じました。
こうして新たに6株のいちごちゃんが仲間に加わりました。


